不動産の売買契約では、“重要事項説明(=重説)”の読み合わせが行われます。
重説とは、物件の調査結果や現状などが事細かに記された、まさに物件の説明書。重説の作成と読み合わせは、宅地建物取引士の有資格者がおこなわなければならないという取り決めがあります。
実は今、この重説読み合わせに「IT化」の動きがみられています。
重説の読み合わせは、基本的に売買契約の前に、売主・買主・仲介業者が顔を合わせておこなわれるものです。ただし法律上、説明義務があるのは、買主に対してのみです。
平均的にかかる時間は2時間ほど。契約書の署名・捺印等とあわせると、売買契約に3時間以上かかることも珍しくありません。
時間がかかる重説の読み合わせですが、売買前に、売主と買主が物件の権利や規制のことを確認することはとても大切です。
「こんなこと聞いていない!」
「詐欺だ!」
重要事項説明は、売買後のこのようなトラブルを未然に防ぐために非常に重要な位置づけとなっています。
では、重説の“IT化”とは一体なんなのでしょうか?
不動産売買における重説のIT化は、国土交通省が主導となって本格運用に向けて動き出しています。
IT重説とは?
- 宅地建物取引業法第35条に基づき宅地建物取引士が行う重要事項説明を、テレビ会議のITを活用して行うもの。
- パソコンやテレビ等の端末を利用して、対面と同様に説明・質疑応答が行える双方向性のある環境が必要。
- 「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」において、対面で行う重要事項説明と同様に取り扱うものと規定。
つまり、今まで基本的に売主・買主・仲介業者が同じ場所に集まって、対面して重要事項の読み合わせを行っていたものが、スカイプやZOOMでも可能になるということ。これにより顧客の負担を大きく削減することができるようになるのです。
不動産賃貸契約の重要事項説明については、すでに重説のITの本格運用が始まっています。
しかし不動産売買については、まだ試験段階。2019年10月から、約1年間の社会実験が始まります。
2015年から法人による不動産売買における社会実験はすでにおこなわれていて、今回の実験は本格運用に向けた最終調整との見方が強いのです。
ではここからは、IT重説のメリットと注意点を見ていきましょう。
1.遠隔地の顧客の移動や費用等の負担軽減
⇒「相続した実家」「海外居住者による売却」このような物理的に事務所に来ることが難しい人が、お金と時間をかけずに説明を受けることができます。
2.重説実施の日程調整の幅の拡大
⇒「仕事が忙しい」「介護で家を長時間空けられない」という人でも、重説の日程調整が容易になります。
3.顧客がリラックスした環境下での重説実施
⇒不動産取引には不慣れな人が多いものですが、家にいながら説明を聞くことができるので、理解力が高まりやすく、疑問・質問も出てきやすくなります。
4.来店困難な場合でも本人への説明が可能
⇒高齢者やけがなどにより外出が困難な人でも、代理人を立てずに本人が説明を聞くことができます。
IT重説では、説明をおこなう宅建士と顧客、お互いが書面や音声を認識できる視聴環境が求められます。音声や画像が不鮮明である場合には、適切な環境とは認められません。
また録音・録画も義務付けられており、そのための同意書の取得も求められます。
結局、「準備の方が大変」との見方もでき、IT重説に向いている人・不向きな人というのが出てくることは避けられないでしょう。
2019年10月から社会実験が開始されるIT重説。本格運用前なので、視聴環境の準備や説明のスムーズ化などについては未だ不安が残ります。
今後、社会実験を経て、IT重説が顧客の1つの選択肢となり、不動産売買にかかる負担が減ることが期待されます。
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